
本作は、ダンサブルなアップテンポナンバーは1stシングルの「Lose My Breath」ぐらいで、あとはミディアム〜スローテンポの楽曲で占められるという意外な構成。これまで遅いテンポの曲はデスチャのアルバムの泣き所だったわけで、今までのデスチャのイメージや「Lose My Breath」からするとちょっと想像できない構成なのだけど、これがまた意外にも実にいいアルバム。「Lose My Breath」が刺身のツマに思えてしまうほどいい曲が並んでいるのだ。
これまでアップテンポナンバーで発揮されていた早口ボーカル(「Cater 2 U」)やソロとコーラスの出入り(「Bad Habitat」)、ボーカルとリズムトラックのずらし(「Is She The Reason」)といったデスチャの特徴が、今回はスローテンポでしっかり活かされていて、スローテンポが続く構成も間延びに感じるところはない。「Is She The Reason」なんかほんとに美しい佳曲だし、ムーディーな色気漂う「T-shirt」や、オールドポップ的なムードの中で早口ボーカルとコーラスが絡みあう「Girl」、コーラスワークが美しい「If」なども好トラックだ。
それからこれまでどうしてもビヨンセがグループを引っ張っているのが明白だったのに対して、3人が並列に並んでいるのもいい。歌割りにしても存在感においても、ビヨンセ+その他2人ではなく、3人それぞれがきちんと"立って"いるのだ。まあ、ビヨンセのソロでの成功の後だけに、かなりその点には気を遣ったフシは感じ取れるのだけれど(気を遣わないとこうならない、という点で、解散もまあ止む無しかなあとは思う)。
もちろん、「Lose My Breath」以外にももう少しアップテンポの新曲が聴きたかったというのはあるし、スローテンポがこれだけ良くて更にアップテンポの良作が何曲か入っていたらどうなっていただろう、と思わないでもないけれど、純粋にいい曲が多いので、ケチをつける気にはならない。3人のボーカルワークの妙が堪能できる、いいアルバムだと思う。
Destiny's Child 「Destiny Fulfilled」(2004)
1.Lose My Breath 2.Soldier 3.Cater 2 U 4.T-Shirt 5.Is She The Reason 6.Girl 7.Bad Habit 8.If 9.Free 10.Through With Love 11.Love